◆何でも何でも英語って
日付が変わる直前に成田空港を飛び立ち、夜明け前に桃園(とうえん)に降り立つ……
「0泊3日」で行ける台湾、行ったことがありますか? もちろん弾丸旅行である必要は全くありませんが。
台湾は中国語です(正式には台湾流の中国語なので広東語や北京語とは違う中国語です)ので、看板や張り紙は何となく理解できます。
でも日本語は一部の人にしか通じませんし、英語はさっぱりです。ほんとコミュニケーションを取るのが大変だったりします。
コミュニケーションを取るのが大変だから深い話はできず、本当に観光気分です。
で、おみやげ屋さん(ですとかコンビニですとか)を覗くと、意外や意外、日本語が書かれたパッケージが並んでいたりするのです。
日本の製品だから日本語が書かれている、というワケでもなく、頑張ってパッケージに日本語を書いてみたという感じなのです。
例えば、「とても美味なビスタット」ですとか「健康的でござます」なんて具合に。
日本語で書かれたのが何でもクールに見えるらしく、着ているTシャツにプリントされた文字が「おかま」ですとか「いい国作ろうキャバクラ幕府」なんてものを平気で(むしろイカした感じだという風情で)着ている一般人もいたりします。
意味、わかってるのかしら。
まぁ日本でも「Love child」と書かれたシャツを平気で子供に着せていた人がいたような(これ、「私生児」って意味です…と、このネタは落合恵子さんの本の中にあったネタですが)。
20年ぐらい前には「Bitch」なんてブランドが流行ったこともありましたっけ(これは「あばずれ」ですとか「メス犬」といったような意味合いで、女性蔑視のスラングです)。
石橋さんの作ったブリジストンですとか、北海道のサッカーチームの名前がコンサドーレといったことはさておき、日本だと何でもかんでも横文字にすれば良いと思っているフシ、ありません?
もちろん早稲田大学アメフト部のチーム名がビッグベアというのは、まぁアメフトのチーム名が英語ではないチームがレアですけれど。
別に横文字を使わなくても構わないところで何でもかんでも横文字にしたがるのって、かなり残念な感じがするんですけれど。ちょうど台湾で妙な日本語が出回っているのと同じように。
ただ、時には別の言語で考えると、より深く理解できることもあるんです。

◆別の言語で考えると
「別の言語で考えると、より深く理解できることがある」というのを実感したことは、ありますでしょうか?
例えば「アルバイト」という言葉。
この言葉自体はドイツ語で「労働」を意味します。
第二次世界大戦の負の遺産として有名なアウシュビッツの入口にもこのアルバイトという文字が登場する「労働(アルバイト)が自由をもたらす」という文言が入っていたりします。
もはや日本では「アルバイト」とは言わずに「バイト」なんて略したりするほど定着しているこの言葉ですが、「アルバイト」は「労働」なのです。遊びじゃぁありません。
ついでに「パート」という言葉もあります。
日本だと「アルバイト」は学生のためのもので、「パート」はオバちゃんのためのものという感じのニュアンスがあります。
ひょっとすると「レジ打ちのパート」「品出しのパート」などという具合に使われることから、「パート」という言葉の意味を「担当部署」だと思っていたなんて人は……筆者だけでしょうか。
この「パート」という言葉、元は英語で「part time job」という言葉の最初の「part」だけ取ってきたものです。つまり、「時間労働」というのが正しいところでしょう。
確かにアルバイトもパートも、一般的に時給です。それを思うと「part time job」という言葉はシックリくるのではないでしょうか。

◆では民泊は?
ようやく本題に入ります。では“民泊”って英語で何と言うのでしょうか?
今まで当コラムでも「民泊」を直訳すると「ホームステイ」になってしまい、「ホームステイ」が「民泊」だと勘違いされて困るという話が何度か出てきました。
確かに辞書を調べると「民泊」は「ホームステイ」です。
でも昨今問題になっている”民泊”は、いわゆるホームステイとは全く別物です。
だから昨今問題になっている”民泊”を安易に「ホームステイ」と訳すのは誤訳と言うべきでしょう。
それこそ、「柔道」と「Judo」は別物だというのに似ています。
柔よく剛を制す精神修養である日本古来の「柔道」と、ポイントを取れば良くて見栄えがするように白と青の道着を着るような「Judo」のようなものです。
あるいは「ごはん」と「ライス」みたいなものでしょうか。
お昼時には作業用のつなぎを着た人やタクシードライバーさんでごった返しているような、いかにもという感じの定食屋さんで「ライス」なんて言ったら、周りの視線が痛いことでしょう。
ジュテーム(フランス語で「愛している」)と樹形図ぐらい違います…という冗談はさておき、だから”民泊”は「ホームステイ」と訳してはいけない、と言い続けても、あまり解決にはなりません。
では、昨今問題にされている、あの“民泊”を、どう訳せば良いのでしょうか。
こちらの写真をご覧ください。
これは筆者の知り合いがいるマンションの、オートロックの上に掲示されている”民泊禁止”の張り紙です。一部、修正しているのは建物の名称を伏せるためです。

拡大すると、こんな感じです。

ここで注目して頂きたいのは、「当マンションは民泊禁止です」という日本語に対応する英語です(ごめんなさい、筆者は中国語も韓国語もアウトですので、ここでは英語の部分だけ言及します)。
「Vacation rentals are prohibited in this apartment building.」と書かれています。
日本語の「マンション」が英語圏では「アパート」となるのはさておき…
肝心なのは、”民泊”のところです。
この張り紙では“民泊”を“vacational rentals”としています。
この”vocational rentals”を直訳すると、「休暇中の賃貸」といったところでしょうか。
「ホームステイ」と書かれていない点に注目すべきです。
ちなみに、この張り紙の主はマンションの管理組合なのですが、よくよく見ると「ダイアパレス」というマンションの1棟です。
この「ダイアパレス」というのは「ライオンズマンション」などと同じく、全国に数多くある分譲マンションです。参考までに、wikipediaで検索すると、全国42都道府県に2,000棟以上存在するそうです。
そのような大手さんが昨今問題視されている”民泊”を「ホームステイ」ではなく”vacational rentals”と訳したことは、恐らく今後このような訳が定着してゆく兆しではないかと思われます。
日本ホストファミリー養成協会では、ホームステイを受け入れる家庭(ホストファミリー)を養成しています。「それでもホームステイが民泊と言われないかしら」といったような不安を解消するお手伝いもしております。
ホストファミリーに興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。
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